第13話   講演「庄内竿の魅力」 U   平成16年07月17日  

村上館長いわく庄内竿の竿かざし(扱い)は、耳の所まで立てるということを師匠より教わったと云われた。

関東のヘラブナ釣では手を曲げないで、腕全体を真っ直ぐに立てて魚の当たりを合わる。そして竿全体の弾力を利用し魚の動きに合わせやり取りをし、魚の弱るのを待つ。所が庄内では関東で禁止されている小手先で合わせる。魚が小さい時は、そのまま竿を立てて魚の動きに合わせるのである。同じように竿全体の弾力を利用するが、この時庄内竿は元調子に近いのできれいな満月の弧を描く。魚が大きいと竿の角度により道糸を切られるので、やはり竿を立てなければならない。それが耳の所まで上げるという表現になったものであろう。四間もの長竿となるとそれは大変で魚の引きに合わせ、竿を立てた後、魚が大きいとその竿を首の後ろに回して引きに耐えたと云う。黒鯛の釣では聞いたことが無い釣り方で、大変参考になった。多分大型の赤鯛(真鯛)釣で大型(二尺以上)のものが釣れた時の事と推察した。

庄内の柔らかくしそして強靭な延べ竿を使っての釣では、穂先から鉤先まで長さは、普通竿の長さプラス三尋位の長さの完全フカセを原則としている。そして潮が打ち寄せそして岩から出る潮の払い出しの流れに餌を乗せ自然な状態を演出して黒鯛を釣る。庄内特産のニガダケで作られた庄内竿に合わせた庄内釣独特の釣り方が生まれたものであろう。

やはり、庄内の釣では数を獲る釣というよりも、引きを楽しむ釣である。近代釣法は、どちらかといえば7:3の先調子が多く、穂先のみが多少柔らかい。丈夫な道糸、ハリスの出現で数を釣る釣が主流となってしまった。魚を掛ければ、初心者でもある程度の大きさであれば容易く釣ることが出来ると云う安易な釣へと変化しそれが釣りの大衆化へと拍車を掛けた。

庄内釣りの伝承者を自認する村上館長、庄内竿の製作者丸山松治氏も最近の釣り人のマナーの低下には嘆くものがあると云う。釣の原点である格式ある釣道の庄内釣の時代に帰り、もう一度釣のマナーを見直す必要があるのではないかとつくづく感じた。